イタリアに魅せられてしまった私は翌年の春から毎年イタリアに行くことになる。雑誌や広告をメインとしているカメラマンの仕事は印刷所に合わせてスケジュールが決まる。印刷所は土日、祝日はお休み。その前にデザイナーの仕事がありその前に撮影。つまりゴールデンウィークやお盆、年末は普通の人より早めにヒマになってしまう。そんな訳で毎年4月の後半、航空券が一番高くなるちょっと前、17、8日に日本を脱出。ゴールデンウィーク明けに編集会議がありその後撮影依頼が来るので約3週間、予定も立てずイタリアに行った。街に着き駅にスーツケースを預けその日の宿を歩いて決める。ネットもない時代なので自分の勘と気分で探す。ペンショーネと呼ばれる安宿が多かった。宿が決まると地図を広げエスプレッソと呼ばれるイタリア版ミシュランで食事に行く店を探す。20点満点で評価があり、おおよその予算もわかる。全部イタリア語なので安くて美味しそうな店をこれもまた勘にて決める。日本人が来ないおいしい店にあたる確率が高いがメニューがイタリア語か、置いていない場合が多い。ない場合カメリエーレと呼ばれるお店の人からメニューを聞く。イタリア語しか喋れない人が多いが英語で説明してもらっても巻き舌で早口で料理名を続けて言うものだからなかなか理解出来ない。ある時など「英語で言ってもらえますか?」とお願いしたら「これは英語だ」みたいなこともあった。メニューが出てきたら持参した白水社のイタリア料理用語辞典と格闘して注文となる。
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